ChatGPTを日本語特有の婉曲表現に対応させるには

話題のChatGPT1、企画書や提案書のちょっとした文章を作成するのにすごく便利らしい。社内でも利用している同僚がいる。

そもそもChatGPTとはなにか。本人(本AIというべきか)に聞いてみた。

ChatGPTは、OpenAIが開発した自然言語処理モデルです。テキストベースの対話や文章生成などのタスクに使用されます。GPT-3.5アーキテクチャを基にしており、幅広いトピックに関する情報を提供したり、質問に答えたりすることが得意です。

ChatGPTにて生成

思いっきりタイポしているが問題なかった。

先日プレゼン資料の校正業務があった。社内のメンバーが作成したプレゼン資料を人前に出しても問題ないものにするという作業である。

人前に出しても問題ないポイントとして

  • 事実に基づく表現であるか
  • ソースが必要な情報では、信頼できる一次ソースを引用されているか
  • 誰も傷つけない表現であるか

簡単に言うと、見せたもの、発言したものがメディアやSNSに流れても炎上しないかということ。

これはかなり多くて、報道による政治家の失言を見ていても分かるように、人間はその場の人を満足させる・喜ばせるだけの発言をその場の思いつきでしてしまうことがある。その場ではウケたとしても、後日切り抜かれて出回ると、問題になることが多い。

私に回ってきたプレゼン資料は、登壇者の真っ直ぐな個性が色濃く反映されたユーモア溢れるものだった。ストレートな表現にはなっているが、他社を下げて相対的に自社を上げるように見えてしまう。

私はこの手の尖ったユーモアは嫌いではないけれど、まぁこのままでは問題になるだろうということで、講演を聞いた人も、後日人づて内容を聞いた人も、みんながハッピーになれる万人受けするものにするしかなかった。

普段ならそのまま、自分の頭で一つずつ表現を直していくのだが、試しにChatGPTを使うことにしてみた。ChatGPTに、私がいつも少し時間をかけて頭の中で処理することを変わりにやってもらうことにしたのだ。

私はChatGPTに、資料の文章を婉曲的な表現にしてもらうため、柔らかい表現にしてくださいと指示した。しかし、「〜である。〜だ。」調が「〜です。〜ます。」調になっただけで、鋭い意味を持つ単語そのもが柔らかに変化するような、私の期待する発展を得ることはできなかった。

これは私のChatGPTへの指示の問題も一因であったことが後述の通り判明しているが、業務時間中の試行錯誤はここまでにした。ChatGPTの使いこなしを模索するように従来のやり方で作業をするほうが、終わりが見えると判断したからだ。基本的にはサラリーマンなので、期限とコスト感覚は常に持っておく必要がある。

その場では、「OpenAI社はアメリカの会社だしこういった微妙なニュアンスの調整には対応できないのかもしれない。」と考えた。今考えると英語にも敬語のようなものはあるし、スピーチやディベートのように言葉を巧みに操るといったことは彼らが非常に得意としていることであるのだが。

結論として、この文章を書きながら改めて試してみたのだが、「ポジティブな表現にして」といった指示が一番最適のようだ。

業務で利用した文章はさすがに公開することはできないので、以下に青空文庫から引用した「坊っちゃん(夏目漱石著)2」の冒頭文章での検証結果を参照する。

まずは業務中に試した「柔らかい表現に」指示したもの。

再びタイポしているがスルーされている。

次に「ポジティブな表現に」指示したもの。

指示が違うので当たり前ではあるが、若干表現に違いが見られる。例えば、「柔らかく」と指示した方は全体的にセリフ以外の部分においても口語的な表現「してきました」になっている。「無鉄砲」は、柔らかい表現では「大胆な行動」、ポジティブな表現では、「冒険好き」へ。このあたりどちらか最適かは個人の感覚にもよるかもしれないが、「冒険好き」のほうがややポジティブだろうか。これを見ると坊っちゃんでは「柔らかい表現」の方も単語自体も変化しているが、業務で利用した文章ではほとんど変化が見られなかったので、文章によるところもあると考えられる。

ちなみにChatGPTへ入力した文章は青空文庫からのコピペであるため、ふりがなもコピーされている。元の文章としては言葉が重ねられているように見えるが、ChatGPTで生成された文章では二重の言葉は解消されていた。良きにはからう部分はさすが今どきのAIといったところだと感じる。

誤字脱字に留まらない文章の校正は、地味に思考と作業の時間がかかる上、業務の中の本質に関わらないことが多い。他者の成果物に対しての確認作業であることや、そもそも校正業務を職種として雇用されているわけではないからだ。もちろん出版業界等、それが本質的で重要なとなりうる業務の場合は人間がやるべきであると考えるが、私のようなそれ以外の業界で、かつ業務内の雑務の一つとしての作業であれば、ChatGPTのようなAIでサクッとやるに越したことはない。

このような文章を書いていると、GoogleからBirdの案内がきた。

あくまでも創造は自身ですべきものと断言するが、止まらないこの生成AIの発展の流れに逆らうことなく、多数の思考や蓄積されたデータを整理されたアイデアのヒントが生成されるものとして付き合っていくしかないと考える。

  1. ChatGPT/OpenAI,https://chat.openai.com/ ↩︎
  2. 夏目漱石(1906)『坊っちゃん』青空文庫,https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/752_14964.html ↩︎

投稿者: gumi

外資系アラサーOL。英語はできない。幼い頃に自我が芽生えて以来、なんでも自分でやりたがり、見せたがる。全方位に興味があります。特に旅・料理・投資・観劇・グミ・staub(鍋)。